タスクリストをデザイン思考で見直す習慣:日常業務の非効率を改善の機会に変える
日々の業務は、大小様々なタスクの集合体です。私たちはこれらのタスクをこなすことに追われがちですが、一つ一つのタスクやその実行プロセスに潜む非効率や改善の機会を見逃していることがあります。タスクリストは単にこなすべきことの羅列ではなく、デザイン思考のレンズを通して見れば、ひらめきと改善の宝庫となり得ます。
なぜ日常タスクリストをデザイン思考で見直すのか
ルーチンワークに慣れてしまうと、無意識のうちに非効率な方法を続けてしまったり、より良い進め方がある可能性に気づかなくなったりします。これは、タスクを「ただ終わらせるもの」として捉え、その背後にある目的や、よりスムーズに完了させるための工夫を考える習慣が失われるためです。
デザイン思考は、問題解決や新しい価値創造のためのアプローチですが、その考え方は日々の小さなタスクにも応用できます。タスクリストをデザイン思考の視点で見直すことで、以下のようなメリットが得られます。
- 隠れた非効率の発見: 当たり前だと思っていた手順や方法に潜む無駄やボトルネックに気づけます。
- 改善機会の特定: 小さな変更で大きな効果を生む可能性のある箇所を見つけられます。
- 業務への主体性の向上: タスクをただこなすだけでなく、より良くするための工夫を考えることで、業務へのエンゲージメントが高まります。
- 創造性の刺激: 既存のやり方を疑い、新しい方法を考える習慣が身につきます。
デザイン思考でタスクリストを見直すステップ
日常のタスクリストをデザイン思考で見直すための具体的なステップをご紹介します。これは、デザイン思考の基本的なプロセス(共感、定義、アイデア創出、プロトタイプ、テスト)を日常業務の改善に応用したものです。
ステップ1:共感(Empathize)- 自分のタスク実行時の感情に気づく
まず、自分がタスクリストを実行している最中に、どのような感情や思考を抱いているかに意識を向けます。
- 「このタスクはいつも時間がかかるな」「この作業は面倒だな」と感じる瞬間はありませんか。
- 特定のタスクに取りかかるのが億劫になったり、完了後に疲労を感じたりしませんか。
- なぜその感情が生まれるのか、深く掘り下げて考えてみます。「このタスクのどの部分が特に負担か?」「なぜ時間がかかるのか?」。
これは、タスクリストを実行している「自分」というユーザーに共感するプロセスです。自身の体験を客観的に観察し、正直な感情や不満に耳を傾けることが重要です。メモを取る習慣をつけると、気づきを記録しやすくなります。
ステップ2:定義(Define)- 課題を明確に言語化する
共感のステップで見出した「困りごと」や「非効率」を、具体的な課題として明確に定義します。
- 「〇〇というタスクを実行する際、△△という作業に想定以上の時間がかかり、ストレスを感じている」
- 「□□という手順が煩雑なため、タスク完了までに無駄な手戻りが発生している」
このように、具体的なタスク名、問題となっている作業、その結果(時間、ストレス、手戻りなど)、そして可能であれば「なぜそうなるのか」という理由を含めて課題を記述します。課題を明確に定義することで、その後のアイデア創出が効率的になります。
ステップ3:アイデア創出(Ideate)- 解決策を多角的に考える
定義された課題に対して、可能な限りの解決策を考えます。ブレインストーミングのように、質より量を意識し、突飛に思えるアイデアも含めてリストアップします。
- その作業手順を変えられないか?
- 何かツールやテンプレートを使って自動化・効率化できないか?
- そのタスク自体をなくせないか、あるいは他の人に任せられないか?
- 行うタイミングや場所を変えてはどうか?
- 他の人がどうやっているか聞いてみるのはどうか?
既存の方法にとらわれず、様々な角度からアイデアを生み出すことが重要です。付箋を使ったり、マインドマップを描いたりすることも有効です。
ステップ4:プロトタイプ(Prototype)- 小さな改善策を具体化する
生み出されたアイデアの中から、最も有望で、かつ「小さく試せるもの」を選び、具体的な改善策として形にします。ここで重要なのは、完璧を目指さず、素早く試せる形にすることです。
- 新しい手順を簡単に書き出したメモを作成する。
- 効率化ツールの無料版を試してみる。
- タスクの実行タイミングを翌日に変更してみる。
- 定型的なメール作成の手順をテンプレート化してみる。
本格的なシステム開発や大規模な組織変更ではなく、自分一人、あるいはチームの最小単位で実行できる範囲でプロトタイプを作成します。
ステップ5:テスト(Test)- 改善策の効果を評価する
作成したプロトタイプを実際に日常業務の中で試してみます。そして、その結果を観察し、効果があったかどうかを評価します。
- 試した手順で本当に時間が短縮されたか? ストレスは軽減されたか?
- 新しいツールは使いやすかったか? 期待した効果は得られたか?
- 変更によって予期せぬ問題は発生しなかったか?
テストの結果が期待通りでなければ、それは失敗ではなく「学び」と捉えます。何が上手くいかなかったのかを分析し、課題の定義に戻るか、別のアイデアを試すか、プロトタイプを修正するかを判断します。この反復サイクルが、継続的な改善につながります。
タスクリスト見直しの習慣化のためのポイント
このデザイン思考のプロセスを日々の習慣とするためには、いくつかのポイントがあります。
- 定期的な時間確保: 毎日、あるいは毎週決まった時間に、タスクリストや特定のタスクについて見直す短い時間(例:15分)を設けます。
- 小さな一歩から: 最初から全てのタスクを見直そうとせず、自分が最も負担に感じている、あるいは頻繁に行う一つのタスクに絞って試してみます。成功体験が次のステップにつながります。
- 記録の習慣: 課題に気づいたこと、アイデア、試したこととその結果などを簡単にメモする習慣をつけます。これにより、思考のプロセスが可視化され、振り返りやすくなります。
- 同僚との共有: 可能であれば、チームや同僚と「最近、このタスクのここを工夫してみたんだけどどうだろう?」などと共有してみます。異なる視点からの意見は、新たなひらめきや改善のヒントを与えてくれます。
- 完璧主義からの脱却: 最初から完璧な解決策や、劇的な改善を目指す必要はありません。小さな非効率に気づき、小さく試して、少しでも前に進むこと自体が価値ある習慣です。
まとめ
日常業務のタスクリストは、単なるTo Doリストではなく、デザイン思考の実践を通じて、日々の業務をより効率的、創造的にするための出発点となり得ます。自身の感情に共感し、課題を定義し、アイデアを生み出し、小さく試して評価する。このサイクルを習慣化することで、目の前のタスクをこなすだけでなく、業務そのものをより良くデザインする力が養われます。
今日から、あなたのタスクリストを新しい視点で見直してみてはいかがでしょうか。そこに、日々の業務におけるひらめきと改善の種が見つかるはずです。