チームでブレインストーミングを習慣化:デザイン思考でアイデアの量を増やす方法
チームの創造性を刺激するブレインストーミング習慣
日々の業務において、新しいアイデアが生まれにくい、チームの創造性が停滞している、といった課題に直面されている方もいらっしゃるかもしれません。特に企画部門のような部署では、継続的なアイデア創出が求められます。デザイン思考は、このような課題に対し、共感から始まり、定義、アイデア創出、プロトタイピング、テストという一連のプロセスを通じて、革新的な解決策を生み出すための強力なフレームワークを提供します。このプロセスの中でも、「アイデア創出(Ideation)」フェーズの中核をなす手法の一つが、ブレインストーミングです。
ブレインストーミングは単なる会議手法ではなく、多様な視点や知識を結びつけ、既存の枠を超えたアイデアを生み出すための習慣として定着させることで、チーム全体の創造性を高めることができます。特にデザイン思考におけるブレインストーミングは、アイデアの「質」よりも「量」を重視し、自由な発想を促す点に特徴があります。今回は、チームでブレインストーミングを習慣化し、アイデアの量を効果的に増やすための方法についてご紹介します。
なぜデザイン思考においてアイデアの「量」が重要なのか
デザイン思考のアイデア創出フェーズでは、「できるだけ多くのアイデアを生み出すこと」が推奨されます。これは、初期段階で質にこだわりすぎると、発想が抑制され、革新的なアイデアが生まれる可能性を狭めてしまうためです。
大量のアイデアの中には、一見突飛に見えたり、実現不可能に思えたりするものも含まれます。しかし、それらのアイデアが、他のアイデアと組み合わさったり、異なる視点を与えたりすることで、最終的に実用的かつ独創的な解決策へと繋がる「種」となることが少なくありません。量を追求するプロセスを通じて、参加者それぞれの思考の限界を押し広げ、固定観念から解放された自由な発想を引き出すことができるのです。
チームでブレインストーミングを実践する具体的な方法
チームで効果的にブレインストーミングを行うためには、いくつかの原則を守り、実施形式を工夫することが重要です。
1. 基本的なルールを定める
ブレインストーミングを成功させるための基本的なルールは、ファシリテーターが事前に明確に伝え、全員が理解しておく必要があります。
- 批判をしない: 他のメンバーのアイデアに対し、否定的な意見や評価を一切行わない。
- 自由奔放な発想を歓迎する: 突飛なアイデアや非現実的に思えるアイデアも歓迎し、記録する。
- 量を重視する: アイデアの質よりも、とにかく数を多く出すことに集中する。
- アイデアを組み合わせる・改善する: 他のメンバーのアイデアに触発され、それを発展させたり組み合わせたりする。
これらのルールは、参加者が安心してアイデアを出しやすい雰囲気を作り、多様な意見を引き出すために不可欠です。
2. 実施形式を工夫する
チームの状況や課題に応じて、様々なブレインストーミングの形式を試すことができます。
- オープンブレインストーミング: 議題に対して、参加者が自由に発言していく最も一般的な形式です。模造紙やホワイトボードにアイデアを書き出す係を決めると、視覚的に分かりやすくなります。
- ラウンドロビン: 参加者が順番に一人ずつアイデアを出していく形式です。全員が必ず発言する機会が得られるため、一部のメンバーだけが話すという状況を防ぎます。パスも可能です。
- KJ法(親和図法): 各自がポストイットなどにアイデアを書き出し、それらをグループ分けして関連性を整理する手法です。アイデアの整理・構造化にも役立ちます。
- オンラインツール活用: Miro, Mural, Jamboardなどのオンラインホワイトボードツールや、専用のブレインストーミングツールを活用すれば、遠隔地にいるメンバーともリアルタイムで協力してアイデアを出し合うことができます。これらのツールは、書記の手間を省き、アイデアの可視化・整理を効率化します。
3. 効果を高めるための準備と進行
ブレインストーミングの成果は、準備と進行によって大きく左右されます。
- 明確なテーマ設定: どのような課題に対してアイデアを出すのか、テーマを具体的に、かつ参加者全員が理解できるように設定します。「売上を増やす」ではなく、「〇〇(特定の顧客層)が△△(特定の行動)をする頻度を増やすには?」のように具体化します。
- 時間制限を設ける: ダラダラと続けるのではなく、「このテーマで15分」のように時間を区切ります。短い時間集中することで、多くのアイデアが出やすくなります。
- 視覚的に記録する: 出てきたアイデアを模造紙、ホワイトボード、オンラインツールなどに書き出します。後で見返したり、他のアイデアと関連付けたりする際に役立ちます。書記係を決めるか、オンラインツールを活用します。
- ポジティブな雰囲気を作る: ファシリテーターは、参加者が自由に発言できるような明るく前向きな雰囲気作りを心がけます。否定的な意見が出た場合は、ルールの再確認を行います。
- 最後にアイデアをまとめる: 時間が来たら終了し、出されたアイデア全体を見渡せるように整理します。この時点ではまだ評価せず、類似するものをまとめたり、キーワードで分類したりする程度にします。
ブレインストーミングをチームの習慣にするためのヒント
単発のイベントではなく、日々の業務の中にブレインストーミングを取り入れ、習慣化するためには、意識的な取り組みが必要です。
- 定期的な実施: 週に一度、あるいはプロジェクトの節目ごとに、短い時間でも良いのでブレインストーミングの時間を設けます。例えば、週初めに「今週解決したい小さな課題」について5分だけアイデアを出し合う、といったマイクロ習慣から始めることができます。
- 特定の課題に紐づける: 特定のプロジェクトや、チームが抱える具体的な課題についてブレインストーミングを行うことで、その有用性を実感しやすくなります。
- 全員参加を促す仕組み: 一部のメンバーだけでなく、チーム全員が参加できるような環境を作ります。立場に関わらずフラットに意見を出し合える関係性を築くことが重要です。発言が苦手なメンバーのためには、事前にアイデアを匿名で提出できる仕組みや、ホワイトボードに書き出す形式など、発言以外の参加方法も用意します。
- 成果を可視化し、共有する: 出されたアイデアの中から、次のアクションに繋がったものをチーム内で共有します。ブレインストーミングが具体的な成果に繋がっていることを示すことで、メンバーのモチベーション維持に繋がります。
- 振り返りと改善: ブレインストーミングの効果や進め方について、チームで定期的に振り返りを行います。「もっと自由にアイデアが出せるにはどうすれば良いか」「時間は適切か」などを話し合い、改善を続けます。
まとめ
チームで日常的にブレインストーミングを行う習慣は、デザイン思考の根幹にある「アイデアの量から質を生み出す」考え方を体現するものです。基本的なルールを守り、チームに合った形式や時間、ツールを活用することで、誰でも気軽にアイデアを出せる環境を作ることができます。
ブレインストーミングを習慣化することは、チーム全体の創造性を高め、既存の課題に対する新しい解決策を生み出すだけでなく、メンバー間のコミュニケーションを活性化し、心理的安全性を高める効果も期待できます。ぜひ、日々の業務の中にブレインストーミングを取り入れ、チームのひらめきを加速させてみてください。